目次
利益が出ているのにお金がない
損益計算書を見ると、昨年度より利益が出ている。
でも、実際の資金繰りではそんなに楽になっていない気がする。
いつまでたっても、支払いに追われている・・・。
そんな経験はありませんか?
たくさん売上があっても、その代金の入金より経費の支払の期限が先に来てしまうと、資金繰りがショートしてしまう場合もあります。
今回は建設業を経営している社長の奥様との会話を通じて、そんな事態を回避する「資金繰り予定表」について紹介します。
儲かっている実感がわかないんです
奥様、今月の監査が終わりました。
今期は前期より現場数も増えて、売上も伸びてきましたね。
お陰様で現場数は増えたし、社長も従業員もかなり頑張ってるのよ。
ただ売上は伸びましたけど、資金繰りはまだまだ厳しい状態ですね。
数字で見ると儲かっているのに、
どうして資金繰りが楽にならないのかしら・・・。
お金の流れは見えていますか
現場が増えると材料代とか外注費の請求も増えるから、
常に支払いに追われている感じなの。
売上が増えると逆に苦しい感じがするのは気のせいかしら?
いえ、気のせいではありません。
たしか売掛金の入金は請求書を発行してから翌々月半ば、つまり45日のサイクルですよね。
でも材料代の支払いは翌月末(30日)ですから先に支払いがきてしまい、
その15日後にならないとお金が入ってこない感じですものね。
・・そうですよね!
資金繰りが厳しく感じるのは、いつ何のお金が入ってくるのか、
いつお金が出ていくのか、その流れが今一つはっきり見えてなかったのが原因なのかも。
過去から未来を予測?
だけど、会計の資料って前月の支払とか売上の請求を処理したものですよね。
つまり毎月見せて頂いている損益計算書とか貸借対照表では
資金繰りに関係することはわからないんでしょ?
確かに会計処理に関してはその通りですが、既に完了した過去のデータからでも、
未来のお金の動きを予測することは出来ます。
終わっちゃった過去の取引から未来を予測?
そんなことできるの?
資金繰り予定表とはとは
例えば、先月の貸借対照表の左側にある売掛金をご覧ください。
800万円と900万円で合計1,700万円ありますね?
あぁ、これね。
8月の請求(10月15日入金)の800万円と9月請求(11月15日入金)の900万円ね
そうです。
今は10月なので800万円は入金されますが、900万円は来月の15日に預金に「入ってくるお金」ですね。
では、次に右側にある買掛金が400万円ありますね。
そうなのよ!
これを今月払わないといけないのよね!
先月末の預金残高は100万円で、
8月分の売掛金が800万円入金されましたから、400万円なら払えますね。
でも支払いはこれだけじゃなくて、家賃50万円と従業員の給料が300万円、
社会保険が40万円でカードの支払いが60万円。
それから借入金の返済で40万円だから・・・もろもろで490万円の支払いね。
そうですね。
そうすると、預金残高100万円と入金800万円から
買掛金の支払い400万円とその他支払い490万円を引いても10万円残りますね。
え?残り10万しかないの?
あ、でも先月仕事した900万入ってくるから・・・
それが入ってくるのは来月の半ばですよね?
入金は45日後なので。
え?!それじゃ社長と私の給料払えないじゃないの!!
住宅ローンもあるし、困るわ。
資金繰り予測表を作ろう
お、落ち着いてください!
確か先月申し込みをされた融資が実行されるのは今月でしたよね?
あ、そうだった。
明後日くらいには入金の予定です。
(助かった・・)
ですので、今月は資金繰り的には大丈夫ではないですか
でもまた借りちゃったから、借入金も増える一方よ。
もうイヤになっちゃう!
毎月こんな綱渡りみたいな事やってるから、「儲かってる」なんて本当に実感がないのよ。
これからは資金繰り予定表を2,3ヶ月先まで作成しておけば、
いつ頃どの位の資金が必要になるのか、または余剰資金ができるかを予測できますよ。
そうはいっても、資金繰り予定表なんて一体どうやって作ればいいのかしら。
今なさってましたよね?
何を?
奥様の頭のなかで、資金繰り予定表を作ってらしたでしょ?
資金繰り予定表の活用
そうだったっけ?
はい。
預金の残高からスタートして、今月払わなきゃいけない経費や家賃、給料などを差し引いて
いくら残るかを計算しましたよね。
えぇ、それくらいなら。
そしてその後入金される予定の金額も加算して、お金が足りない場合は
予め融資の申し込みを検討したり、回収できていない売掛金の回収に注力する。
それもいわば資金繰り予定表の活用と言えます。
あんな感じでもいいの?
勿論です。
「資金繰り予定表」では特別に難しい計算をする必要はないんです。
資金繰り予定表の目的は、将来のお金の流れはどうなるかを予測するという事ですから。
そうなのね。
でも間際でやるから慌てるのよね。
前もってしっかり準備しておけば手も打てるしね。
そうですね。
資金繰り予定表は、将来の役員報酬額の決定や
設備投資のタイミングを判断する材料にもできますよ。
まずは社長と私の給料を確保できるように、早速今月から始めますね!
分かりました。
何かご不明な点がありましたらいつでもご連絡下さい。
今日は有難うございました。
まとめ
- 会社の利益とお金の増減は一致しない
- お金の増減を知るためには、資金繰り予定表が必要
- 将来の資金状況を予測して、資金調達など行う
今回は会話の中で資金がどうなるか話していますが、実際には資金繰り予定表をエクセルなどで作成しましょう。
今後の入出金予定のうち、大きな収入・支出を記載すれば、およその資金の流れがわかるようになります。
会計ソフトや販売管理ソフトには、入出金データを作成できるものもあるので、活用していきましょう。
(執筆:石山秋子)
この記事へのコメントはありません。