意外と知らない?!これって接待交際費?

交際費は経費じゃない?

法人が営業活動を行う上で、社内外での人間関係を円滑にするために、飲食やゴルフなどをしたりすることはよくあります。
ただ飲食代などを無制限に認めてしまうと「会社が無駄遣いをして税金を払わなくなる」ことから、税務署のチェックが厳しくなり、交際費については一定の範囲内でしか経費として認めていません。

例えば、一人当たり5,000円以下の飲食費は「会議費」(交際費以外の科目)として全額が経費として認められますが、5,000円超の飲食費は「交際費」に該当してしまい、原則として経費になりません。
(中小企業には経費にできる枠があります。)

交際費になるかどうかは税務調査でチェックを受けやすいポイントとなっているので、正しく処理し余計な指摘を受けないようにしたいものです。

今回は社長との会話を通じて、どのような場合に交際費に該当してしまうのか、逆に交際費でも経費となる場合はどんな時かについて紹介します。

経費になれば税金が減る

社長、こんにちは。
最近は仕事も順調で、売上も増えてきましたね。

経営者売上が増えてきたのは良いんですけど、社外でのお付き合いも増えましてね。
その支出も多くなっているのですが、交際費になる場合とならない場合とでどう違うんですかね?

はい、違いについて説明しますね。
例えば売上が1,000万円、交際費以外の経費が500万円、法人税率が30%だとします。
この場合ですと税金が(1,000万円-500万円)×30%=150万円かかります。

経営者そうですね、経費がある分税金が減りますよね。

ここで、交際費を新たに100万円使ったとしましょう。
交際費は法人税の計算上経費、つまり損金にならないので支出しても節税効果はなく、
お金が100万円減るだけです。

経営者経費と損金は何が違うんですか?

経費は会社が使ったお金だと思ってください。
給料や家賃はもちろん、交際費も経費になります。

経営者損金にならないとは、どういうことでしょうか。

損金は法人税を計算するときの言葉で、「法人税の計算上、経費として認めるもの」です。
ほとんどの経費は法人税を計算するときにも損金になりますが、交際費や役員の賞与などは
税金の計算上は経費扱いできない、つまり損金にならないのです。

経営者そうなると、交際費をいくら使っても税金が減らないんですか?
交際費を追加で100万円使っても、税金は150万円のままなんですか?

そうなんです。
これが交際費ではなく、会議費を新たに支出した場合だったら損金になります。
そのため100万円の支出はありますが、同時に利益が100万円下がることによる
30万円の節税効果があり、実質的な支出は合計70万円になります。

経営者なるほど、交際費になるかならないかで実質的な負担が変わってきますね。

そもそも交際費ってどんなもの?

経営者ところで、そもそも交際費ってどう定義されているんですかね?
私、何が交際費になるかよく判っていなかったのですが…

ちょっと難しいですが、国税庁のHPに出ているものとしては、
「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに関連する行為のために支出するもの」とされています。
特徴としては、科目名ではなく実質で判断される、事業に直接関係のある取引先だけではなく
その会社の社員も含まれること、接待のために直接又は間接に支出する費用も含まれることなどがあります。

経営者ちょっと難しいですね・・・。
具体的に教えてもらえますか?

判りました。
以下にいくつか具体例を挙げてみましょう。

ランチをした場合

取引先の社員と自分を合わせて5人でランチをし、15,000円を払いました。
この場合はどうなるかお判りですか?

経営者取引先の社員も含まれていますが、一人当たりにすると3,000円なので
交際費にしなくとも大丈夫ですよね?

仰る通りです。
この場合は会議費として処理できます。

社員だけで飲みに行った場合

では親睦を深めるため、社内の役員と社員合わせて10名で飲みに行き、
45,000円を支払った場合はどうでしょうか?

経営者そうですね、一人当たりにすると4,500円で5,000円を切っていますが、社内の人間だけですからね…
会議費とすることは難しいでしょうか?

仰る通りです。
社内の方々のみの飲食の場合には金額に関係なく、交際費として処理しなければなりません。

タクシー代

経営者取引先と飲みに行った帰りに、タクシー代を負担することがよくあります。
普通に旅費交通費にしてしまっていますが、特に問題ないですよね?

それはまずいですね..
普通のタクシー代だったら勿論経費として認められるのでそれで大丈夫なんですが、
取引先と飲食をしたときのタクシー代は交際費になります。

経営者けっこう面倒ですね。

後になると判らなくなってしまうと思いますので、ちょっと面倒でも社員の方々に、
タクシーの領収書に「交際費」とメモ書きなどを残しておいてもらうといいかも知れないですね。

会議室での食事

経営者社員だけ参加の飲み会の費用は交際費とのことですが、
社員が会議室で食事会をした場合などはどうでしょうか?

社内の特定社員だけを対象とした飲食代は、金額にかかわらず交際費となります。
しかし社員全員が参加した食事会などは、専ら従業員の慰安のために行われるものであり、
そのために通常要した費用は交際費ではなく、福利厚生費などの科目で経費として
処理することが認められています。

経営者ポイントは何ですかね?

「特定の部署に限らない従業員の慰安のために行われたこと」と
「通常要した費用」ということになると思います。

お中元を贈った場合

経営者例えば1,500円の和菓子を買い、取引先にお中元として贈った場合はどうでしょうか?
正直金額が小さいので消耗品や会議費としてしまえればな、などと思ったりもするのですが。

社長の仰ることは良く判ります(笑)。
確かに、その位の金額ならば交際費として処理しないこともあり、税務調査でも
それ程細かく指摘されないかも知れませんが、当然金額に関係なく交際費です。
しっかり交際費として処理することによって、調査でも良い印象を与えられますよ。

経営者わかりました。バレたらイヤですからね..
きちんと会議費などとは区別して処理するようにします。

中小企業は交際費も損金にできる

経営者これまでの話では、交際費は損金として全然認められないような感じもするのですが、
認められる場合ってありますか?

実はあります。
中小企業では、「800万円」又は「接待飲食費、すなわち社外の人との飲食費のうち50%」の
いずれか大きな方を損金として計上できます。
なお、大企業では800万円という損金の枠はなく、飲食費の50%しか損金に出来ません。

経営者中小法人とはどのような法人ですか?
当てはまるかどうかで損金計上出来る額が随分違ってくるように思えますが。

資本金1億円以下の法人で、資本金5億円以上の法人による完全支配関係がないものとされています。
御社は資本金が1億円以下ですから、年800万円の交際費を損金として計上出来ます。
ご安心ください。

経営者ありがとうございます。

領収書にはメモを書く

経営者あと、領収書に記載が必要な情報について教えてもらえますか?

①飲食等の年月日
②飲食に参加した人数
③金額と飲食店の名称及び所在地の記載が必要になります。

経営者交際費になってしまうと途端に厳しくなってしまうように思っていましたが、
きちんと領収書を整理して計上している限り、年800万円は経費として認めてもらえるんですね。
少し安心しました。

まとめ

  • 交際費は損金にならない
  • 中小企業なら800万円まで経費(損金)にできる
  • 交通費や厚生費にも、交際費になるものがある
  • 領収書の管理・保管をしておく

税務調査では交際費は厳しくチェックされる項目になっています。
領収書などにしっかり内容を記載し、調査があった時に指摘されないように準備しておきましょう。

(執筆:椙山 昇)

 

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