法人にして得する人、損する人

法人成

個人と法人はどちらが良い?

個人事業として独立して、これまで一生懸命に仕事をやってきたあなた。
だんだんと仕事量が多くなり、所得税や住民税の納税が増えてきました。
そろそろ「法人成り」も検討しなくてはと思われているのではないでしょうか。

そこで今回は、個人で建築業を営んでいる社長との会話を通じて、個人事業主から法人成りする場合のメリット・デメリットをご紹介いたします。
また法人成りした場合の節税ポイントもご紹介します。

法人成り(法人化)ってなんだろう

中城blogこんにちは。個人事業を開業されて5年経ちましたね。
お仕事はお一人で営んでおりますが、前年の売上は年商1,000万円超えましたし、
今年も長期工事の受注がありますので、この調子でいけば1,200万円は超えそうですね!
節税も考えて法人成りをご検討されてはいかがでしょうか?

経営者そうですか。
独立してから一生懸命に仕事を頑張ってきました。
経理や税金のことはあまりよくわからないですが、
税理士先生に見てもらっているので安心しております。
ところで、そもそも法人成りとは何でしょうか?

中城blogはい、うれしいお言葉ありがとうございます。
これからも懐刀としてご助力させていただきたいと思っていますのでよろしくお願いいたします。
法人成りとは、個人事業主が株式会社や合同会社などの法人を設立して、法人に成り代わることをいいます。

個人事業主と法人の違い

経営者そうなんですね。
そもそも個人事業主と法人は何が違うのでしょうか?

中城blogまず税制面からみると個人事業主と法人の大きな違いは
税金の計算の基準とする税法が違うという点にあります。

経営者と言いますと?

中城blog個人事業主であれば「所得税法」、法人であれば「法人税法」を基準に
税額を計算していきます。
どちらの納税額も基本的に「収入金額-経費(=所得)」に対して税額が決定されます。
ただし、計上できる経費や課される税率、適用できる控除制度などに違いがあるので、
たとえ売上や経費が一緒でも、個人事業主か法人かによって最終的な納税額は変わってしまいます。

経営者そうなんですか。
税金以外にも違いはありますか?

中城blog手続き面からみると、個人事業主であれば開業届を管轄の税務署に提出するだけで
事業を開始することができ、初期費用はかからず手続きが簡単です。
これに対して法人は設立費用が株式会社の場合では約25万円必要で、
書類ができてから設立までに2週間程度かかってしまいます。

法人成りのメリット1 社会的な信用力

経営者なるほど、法人を設立すると初期費用がかかるのですね。
法人成りをするメリット・デメリットを教えてください。

中城blog法人成りをするメリットとして代表的なものをいくつかご紹介いたします。

経営者まず1つ目は何ですか?

中城blog社会的な信用が高くなることが挙げられます。
会社設立するには登記をする必要がありますが、そこには会社の所在地や資本金、役員などの
重要情報が記載されており、誰でも自由に確認ができるため社会的な信用が高くなります。
また、資金調達や人材の採用、取引先の拡大など一般的には個人事業主よりも法人の方が有利に働くでしょう。

経営者確かに法人でないと仕事が受けられないことなどありますね。

法人成りのメリット2 経費が2重で計上できる

中城blog2つ目が節税になる話です。

経営者会社を作って節税するという話はよく聞きますが、
実際にはどういうことなのか気になります。

中城blogまず役員報酬を支払うことにより、法人の経費と給与所得控除の2度、経費計上できます。
個人事業主は、収益-経費にそのまま所得税がかかります。

経営者そうですね。
今は個人事業なので、自分の給料設定とかないですね。

中城blogそれが法人になると、会社から社長に対して役員報酬(経費)を支払うことができます。
これにより、経費を増やした(利益を減らした)金額に法人税をかけることになります。

経営者なるほど。
給与所得控除で2度経費にできるというのは、どういうことですか?

中城blog役員報酬については給与所得控除を使うことができるので、65万円~220万円(2018年分)を
所得から差し引くことができます。
この給与所得控除控除とは、給与所得者がご自身の給与から
仕事に必要なものを買ったりするだろうということで、概算で経費を差し引ける制度です。

経営者給与から使ってもいない概算の経費を引けるんですか。

中城blogそうなんです。
つまり、法人では役員報酬という経費が計上でき、社長はもらった役員報酬から
給与所得控除額を概算経費として計上できるので、2度経費が計上できて節税になります。

経営者法人にして給料を自分に払うだけで、税金を減らせるなんてすごいですね。

中城blogただし役員報酬は、決算日の翌日から3ヵ月以内に決定した金額を
その決定した日の属する事業年度中は同じ金額で支給し続けないと、
経費として認められない金額が発生してしまうので注意が必要です。

法人成りのメリット3 消費税が免除される

中城blog次に、消費税の納税義務が最大で2年間免除される話があります。

経営者毎年何十万も払っている消費税が免除されるんですか。

中城blogはい、消費税の納税義務は基準期間(原則として個人事業者はその年の前々年)の
消費税が含まれている売上高(課税売上高といいます。)が1,000万円を超えた場合に発生します。

経営者2年前の売上が1,000万円超えたら消費税を払うってやつですね。

中城blogそこで、個人事業から法人成りすると、消費税法上「新しい事業者」とみなされます。
すると新たに設立された法人については2年前(基準期間)が存在しないので、
原則として設立1期目と2期目は消費税の納税義務を免除してもらうことがでるので節税になります。

経営者2年前の基準期間がないから、消費税もなくなるんですか。

中城blogただし基準期間が存在しなくても特定期間(原則として前年の前半6ヵ月)において
課税売上高または給与等支払額が1,000万円を超えた場合には、その特定期間が含まれる事業年度から
消費税の納税義務が発生するので注意が必要です。

経営者今のところ、半年で給与を1,000万円払うことはないから大丈夫そうです。

中城blogまた、設立するときの資本金が1,000万円未満にしておかないと
設立1期目から納税義務が発生するのでこちらもご注意ください。

法人成りのメリット4 欠損金が長く使える

中城blogそれから赤字(欠損金)の繰越控除の適用期間が10年(平成30年4月1日以降開始事業年度)になる
のもメリットですね。

経営者いままでは赤字とかなかったですが、
法人にして役員報酬を払うようになったら赤字になることもありそうです。

中城blog個人事業主でも、青色申告の承認申請書を提出している事業者で
経営が赤字になってしまった場合には、翌年以降の事業所得と相殺することができます。
個人事業主の場合は、この赤字の繰越期間が3年ですが、法人の場合は繰越期間が10年になります。
大きな赤字が出てしまいその後3年以内に黒字と相殺できなくても、
法人であれば4年目以降の黒字と相殺できるので節税になります。

法人成りのメリット5 賠償責任の限定

中城blog何かあった時、会社の損失にかかる賠償の責任の範囲が限定できることも挙げられます。

経営者具体的にはどういうことですか?

中城blogもしも事業で大きな損失が出た場合、個人事業主は私的財産を処分してでも
損失の補てんに回さなければならず、最悪の場合、自己破産に追い込まれるケースもあります。
これに対して法人(株式会社)であれば、社長個人とは別人格となるため、
出資した金額は返ってこないことがあっても、私的財産を損失の補てんに回す必要はありません。
(ただし、会社が借入をした際に社長個人が連帯保証人になっている場合は除きますのでご注意ください。)

経営者会社をつぶして社長が逃げてしまった話、聞いたことがありますよ。
だから銀行の借入では、逃げられないように社長個人の保証も求められるんですね。

法人成りのデメリット

中城blog逆に法人成りする場合の代表的なデメリットを3つご紹介いたします。

経営者やはりデメリットもあるんですね。

中城blog1つめが会社設立に費用がかかることです。
先程、個人事業主と法人の違いでお話ししましたが、株式会社を設立する場合は、
約25万円の費用がかかってしまいます。

経営者個人事業を始めるときはお金かからなかったので、確かにデメリットですね。

中城blog2つ目が社会保険の加入義務が発生することです。
個人事業主の場合は、基本的には常時雇用している従業員が4人以下の場合は
任意加入(事業により異なる)ですが、法人の場合はたとえ社長1人であっても強制加入になります。

経営者いまでも国民健康保険と国民年金払っているけど、高くなるんですか?

中城blog社会保険とは「健康保険」と「厚生年金」のことをいいます。
社会保険は従業員と会社で折半となり、給与の金額を基準に保険料が決定されます。
従業員負担分は給与計算の際に天引きするわけですが、会社から支払う保険料は大まかに給与支給額の約30%ですので資金繰りが苦しくなります。

経営者30%を折半だと、会社が負担する社会保険料が人件費の15%もあるってことですか。
すごく高いですね。

中城blog3つ目が赤字でも税金が発生することです。
個人事業の場合赤字であれば納税は発生しないのですが、法人になると
法人住民税に均等割りといわれる税金があり、所得の有無にかかわらず
年間最低7万円(事業規模に応じます。)支払わなければなりません。

経営者赤字の時はお金がないから7万円も厳しいですね。

税金はどれくらい変わる?

経営者法人成りのメリット・デメリットはわかりましたが、
私の場合は個人事業を続けるのと法人成りするのはどちらがお得なのでしょうか?

中城blogはい。では税金の面からいうとどちらがお得なのか試算してみましょう。

 

■個人事業を続けた場合(事業所得のみ)

<所得税>

①総収入12,000,000円-必要経費等4,800,000円=所得金額7,200,000円

②所得金額から差し引かれる金額(社会保険料や生命保険料、配偶者控除など)1,200,000円

③課税所得金額①-②=6,000,000円(千円未満切り捨て)

④税額の計算 ③×20%-控除額427,500円(平成30年度)=772,500円

 

<住民税>

①所得金額7,200,000円

②所得金額から差し引かれる金額1,100,000円

③課税所得金額①-②=6,100,000円(千円未満切り捨て)

④税額の計算③×10%(百円未満切り捨て)+均等割5,000円(在住している市区町村で異なる)=615,000円

 

<消費税>

7,200,000円(概算値としてすべて消費税の課税対象とする)×8/108=533,300円(百円未満切り捨て)

 

合計 所得税772,500円+住民税615,000円+消費税533,300円=1,920,800円

 

■法人成りした場合

<法人税>

1,200,000円 (役員報酬を月50万円×12か月とした場合の税引き前当期純利益)×36.81%(平成30年4月1日~平成31年3月31日開始事業年度。資本金1億円以下の外形標準課税不適用普通法人の場合の合計税率)+住民税均等割70,000円=511,720円

 

<消費税>

0円(免税)

 

<所得税>

①給与所得金額6,000,000円×80%-540,000円(平成30年度)=4,260,000円

②所得金額から差し引かれる金額1,700,000円(社会保険加入による増加含む)

③課税所得金額①-②=2,560,000円(千円未満切り捨て)

④税額の計算 ③×10%-控除額97,500円(平成30年度)=158,500円

 

<住民税>

①所得金額4,260,000円

②所得金額から差し引かれる金額1,600,000円

③課税所得金額①-②=2,660,000円(千円未満切り捨て)

④税額の計算③×10%(百円未満切り捨て)+均等割5,000円(在住している市区町村で異なる)=271,000円

 

合計 法人税511,720円+消費税0円+所得税158,500円+住民税271,000円=941,220円

 

よって、概算計上になりますが、法人成りした方が1,920,800円-941,220円=979,580円有利になります

経営者結構違いますね。
設立費用や社会保険加入しなくてはならなかったりするので、
資金繰りは注意しなくてはいけないですが、今後の新規取引先との
円滑な取引をするためにも法人成りにした方がよさそうです。

中城blog2年間だけですが、消費税の免税も大きな要因ですね。
これから社長として会社を大きく安定したものにして、
素晴らしい仕事の技術を通して社会貢献をしていっていただきたいです!

経営者はい!なんだか身が引き締まる思いになりました。
精一杯頑張ってみようと思います。
わからないことも多いのでこれからもどうぞよろしくお願いいたします。

中城blogはい!喜んでサポートさせていただきます!

(執筆:中城 光昭)

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