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時効になれば税金は免除される
今回は贈与税の時効について説明します。
普段はあまり気にしないものですが、家族間でもまとまったお金を渡すと贈与税がかかります。
お金以外でも、生命保険の満期金やゴルフ会員権の名義変更なども贈与になる可能性があります。
けっこう知らずに「実は贈与だった!」ということがありますが、たとえ贈与税がかかる場合でも時効期間が過ぎれば税金は免除されます。
時効期間は3種類
時効期間は一律で期間が定められているわけではありません。
内容によって3種類に分かれます。
(1)3年の場合
期限内に贈与税の申告書を提出した場合の時効期間で、申告期限の翌日から3年となります。
つまり申告した場合は3年を経過してから税務署が税金が不足していることに気が付いても、不足分の税金を納めるように通知してくることはありません。
ただし、脱税の意思が発覚した場合は時効期間が7年になります。
(2)5年の場合(贈与税は6年)
申告期限内に申告書を提出していない場合の時効期間は、申告期限の翌日から5年となります。
ただし、脱税の意思があった場合は時効期間はやはり7年になります。
また脱税の意思がなくても、平成16年以降の贈与税については時効までの期間が6年とほかの税金よりも1年長くなっています。
(3)7年の場合
申告に虚偽があるなど脱税となる場合の時効期間で、申告期限の翌日から7年となります。
虚偽とは、事実と違う内容で申告したり一部を隠したりすることです。
必殺、時効リセット
上記のように3年もしくは5年、7年の間に何の音沙汰がない場合は時効となります。
それ以降、税金を請求されることはありません。
でも、税務署も黙ってはいません。
税務署は時効を迎えるまでに督促状を送ったり差し押さえを行うなどして、時効期間を一旦リセットすることができます。
そのため例え時効までの期間がたった残り1日だったとしても、督促状が来てしまうと時効期間はリセットされるのです。
また最初から3年~7年の時効期間を待たなければいけません。
時効を待つリスク
税務署は、簡単に時効期間をリセットさせることができます。
つまり税金の時効を成立させることは非常に難しいといえます。
そして時効を迎えずに税金を滞納したままでいると、加算税や延滞税などを納めなければならなくなります。
本来収めるはずの税金よりも遥かに多くの税金がかかるということです。
税金の滞納があると金融機関からの融資を受けられないので、事業をしている方にとっては時効を待つことはリスクでしかありません。
別の調査で贈与を指摘された事例
ここで1つ、贈与税が時効となった事例を紹介します。
関与先の経営者が亡くなり、相続税の申告と納税は期限内に無事に終わりました。
そして申告期限日から2年が過ぎる頃に、この方の相続税について税務調査が実施されました。
相続税の調査は問題もなく終了したのですが、調査官から意外な質問を受けることとなりました。
税務署の調査官
「被相続人(亡くなった社長)の預金口座だけでなく、被相続人の奥様や子供の通帳についても、かなりさかのぼって確認しました。
そのなかで贈与税がかかるかもしれないものがあったので、ちょっと教えてください。」
相続税の調査が終わってホッとしたのもつかの間、一気に緊張が走りました。
調査官から出てきた質問は2つです。
12年前の定期預金の出どころは
12年前に奥様名義で定期預金を作っていました。
金額は数百万円とまとまったお金です。
税務署の調査官からの第一の質問は、
「この定期預金、どこからお金を用意したんですか?」
です。
つまり社長が稼いだお金を奥様名義の定期預金にしたでしょう?と聞いてきたのです。
確認したところその通りだったので、「贈与されたものです」と回答しました。
でも12年前だと時効が成立しています。
税務署の調査官からも「わかりました。まぁ7年経過しているので時効ですね。」との回答。
・・・じゃあ、なんで聞いたんですか。
12年前のこと調べた時間を返してほしい心境です。
3年前の保険会社からの入金は
3年前に奥様の口座に保険会社からの入金がありましたが、確定申告書に記載がありませんでした。
すでに資料もなく苦労しましたがなんとか調べてみたところ、奥様自身が払っていた保険の解約返戻金でした。
奥様としては自分が払っていたものが戻ってきただけなので、税金がかかるとは思っていなかったのです。
実は社長(夫)が払っていた保険について妻が解約返戻金をもらえば贈与税がかかります。
自分で払っていた保険についての解約返戻金をもらうと、所得税がかかります。
(払った分以上に戻ってきた時に所得税がかかります)
こちらは申告漏れとして、あらためて申告・納付をしました。
まとめ
- 税金にも時効はある
- 時効はリセットされてしまう
- 意外なところから申告漏れが見つかることがある
いかがだったでしょうか。
今回は実例を交えて税金の時効について説明しました。
結論としては時効はあるけど、税金から逃げることはできないということです。
税務署は預金口座をすべて見ていますので、大きなお金の動きは贈与にならないか考えて動かしましょう。
収入があったら、税理士に申告の必要があるか確認すると良いでしょう。
(執筆:新井理恵)
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